刑事事件 少年非行 犯罪被害者支援

加害者側の仕事をしている弁護士が被害者支援に関わる意味

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被害者支援と加害者側の弁護の双方に関わること

私は,非行少年の付添人や刑事事件の弁護人をしていますし,犯罪被害者支援もしています。

この姿勢は矛盾があるように見えるかもしれません。被害者の方々からは,加害者のことを考えて被害者の立場に沿わないんじゃないかと思われるかもしれません。でも,双方をやることの意味があると思っています。

被害者支援において,刑事手続に精通しておく必要性

犯罪被害者支援で,警察や検察との間で交渉したり,刑事裁判で被害者参加や意見陳述をするなど,司法に関する領域の問題を適切に行うには,刑事事件の手続に精通していることが必要です。

刑事弁護に精通した弁護士は,どういうことがあれば刑が軽くなったり重くなったりするのか,そのポイントをよく知っています。

ある事件で,被疑者・被告人の弁護人はどういう意図でそのような主張をするのか,検察官はどういう証拠があれば事件を起訴してくれるのか,といったことを十分に理解しています。被害者の方のために効果的な活動をするには,それが不可欠だと考えています。

加害者の弁護をしている弁護士が,被害者に親身になってくれるのか?

そうはいっても,加害者側の弁護をする弁護士は,本当に被害者の味方になってくれるのか疑問に思われるかもしれません。

でもこれは,民事事件ではごく普通のことでもあります。弁護士は,依頼者の利益を実現するのが役割です。お金を貸した側につけばお金を回収するためにできるだけのことをしますし,お金を借りた側につけばやはりその依頼者の利益を計るために全力を尽くします。同じように,被疑者・被告人の側につけばその利益を図るし,被害者の側につけば被害者のために全力を尽くします。

被害者支援と加害者の弁護の双方に関わっている弁護士は多くいます。今のところ,被害者支援は,ビジネスとして見合う分野ではないと思います。でも,私を含めて,被害者支援を担いたいと思う弁護士たちがいます。

私が犯罪被害者支援に関わるようになったのは,あるご遺族にお会いしたことがきっかけでした。ご自分が犯罪被害者の方や,遺族の方々の集まる自助グループに誘っていただき,多くの被害者のご遺族,ご本人の話を聞きました。そこで,被害者や遺族の方々が,司法の様々な場面で,想像を絶する形で二次被害を受けてきたことを知りました。その二次被害に関わった司法関係者には,弁護士も多くいました。

被害者の方々が置かれた,あまりにも悲惨な状況の一端を知りました。そして,司法の中で,被害者の権利が,あまりにもないがしろにされていたことを知りました。被害者の苦しみを大きくしていることについて,司法が大きな責任を負っていることを知りました。もはや,被疑者・被告人の弁護人をしている私であっても,何もしないでいるわけにはいかないと強く思ったのです。

被害者支援にたずさわるようになって以降,ある日突然,一方的に受けた被害に深く傷つき,ショックを受け,これからどうすればいいかわからなくなっている方々にたくさんお会いしてきました。その方々に,これから起こる手続を説明したり,被害者として行使できる権利があることをお伝えし,どういう選択をするのかについて一緒に悩み,奪われた尊厳を取り戻していく過程をお手伝いさせていただくことは,私にとって大きな意義のあることでした。

こうしたことがもっと多くの被害者の方々に届くようにしなければならないと考え,香川にいる頃には,弁護士会の犯罪被害者のための相談システムを整備したり,民間支援団体のお手伝いをしたり,警察学校などでの研修講師を引き受け,多くの人に犯罪被害者支援を担ってもらいたいと考えて活動してきました。

世間に犯罪被害者支援を行う弁護士がもっとたくさん増え,被害者の方々が多くの被害者支援専門の弁護士の中から自分に合った弁護士を自由に選択できるようになり,私のように加害者側の弁護もするような弁護士はもういらないと言われるようになるのかもしれません。

でも,私はずっと犯罪被害者支援に関わっていきたいと思っていますし,私を選んでくださる被害者の方のために全力を尽くしたいと思っています。

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