その他 犯罪被害者支援

いじめの調査と司法面接

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はじめに

ある自治体のいじめ第三者委員会の調査員を担当していて,そこで,まわりで見ていた子どもから事情をきかなければならないという場面があったので,「NICHDプロトコルに基づく司法面接の最小限の手続」を使っての面接を実施してみた。

 

 

司法面接とは?

司法面接とは何ぞや?と思われるだろう。
ここは,立命館大学司法面接支援室の説明をお借りしたい。
 

司法面接とは、子ども(および障害者など社会的弱者)を対象に、以下の3つの目的を持って行う面接のことです。"forensic interview"と呼ばれることもあります。

目的1:子どもからの聞き取りが子どもに与える負担をできる限り少なくする。
目的2:子どもから聞き取る話の内容が間違った誘導の結果ではないかという疑念がもたれる可能性をできるだけ排除する。
目的3:子どもの関わった事件が何らかの作為による虚偽の話ではなく実際にあった出来事であるかどうかを検討するための情報を得る。原則として1回,出来事に関する事実の聴取を行います。

手続きとしては、まず信頼できる関係(ラポール)を築き,子どもから自発的に報告をしていただいたあと,オープン質問(お話しして,それから等),WH質問(何,誰,どこ等)を用いて面接を行います。録画により正確な記録を行い,子どもが何度も面接を受けなくてもよいようするなど、できる限り子どもの心理的負担を少なくする方法をとります。
https://forensic-interviews.jp/doc/?r=7

 

いじめ調査における司法面接の活用

いじめ第三者委員会の調査は,実際にいじめが起こり,学校でいろいろな調査がなされ,関係者が関わり,それでもうまくいかない段階で開始されることが多い。だから,子どもたちは,それまでに親や何人もの教員から話をきかれていて,おそらく誘導尋問もされていて,記憶はいろいろと汚染済みのケースが多いだろう。その意味では本来の司法面接の場面ではないのかもしれない。

それでも,やってみると,先に子どもから話をきいていた教員の報告書よりもずっと多くの情報が得られた。

このプロトコルの最初の手順は,「最小限の手続」のバージョンでも結構いろいろとあって時間がかかるのだが,これをきちんと踏むことは重要だと感じた。正確な答えを得るためでもあるけど,初めて会う子どもとの間で,子どもが安心できる空間を作って,たくさん話してもらえるという意味でも効果が高いのではないだろうか。

司法面接の弁護士業務への応用

この中で使われる質問技法は,弁護士が日々の業務で成人のクライエントから事情を聞き取るときにも応用できるはずだ。とくにこの二つは有用。
・時間分割(AしてからBまでのことを,全部話してください)
・手がかり質問(さっきAと言っていたけれど,そのことをもっと話してください。)

刑事弁護にある程度関心のある弁護士なら,誘導尋問は良くない,オープンな質問をすべきだ,とは思っている。でも,オープンな質問とは,5W1Hの質問だとも思っているのではないだろうか。「そこにいたのは誰ですか?」とか。でも,司法面接ではこれはオープンな質問とは扱っていない。上の二つの質問を使ってみると,クライエントが話す情報量の多さに,目からうろこが落ちる思いをするのではないだろうか。

弁護士会では,子どもの権利委員会とか,犯罪被害者支援委員会とか,ごく一部の委員会だけが関心を持っているが,もっと多くの弁護士が身につけた方がよいのではないだろうか。私は,四国弁連の被害者支援委員会が企画した研修で,当時北海道大学の仲真紀子先生のトレーニングを受けたが,わりといろいろなところで研修の機会はあるはずだ。私も,また近いうちに研修を受けて,ブラッシュアップしたいと思っている。

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