その他 刑事事件

手話通訳が必要なわけ

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聴覚障害者の方と話すのに,手話ができなくても筆談ができれば十分?
というわけじゃないのです。
法曹関係者も意外と知らない手話のこと。
いくつかご紹介します。

日本語と手話は別の言語

役所とか銀行で,聴覚障害のある人に対して,筆談で対応しているところは結構あります。それはそれで必要なことなんだけど,筆談で対応していればそれでいいわけではありません。なぜ?

手話を使う多くの人にとって,日本語は第二言語だからです。

手話は,日本語を手の動きで表現したものではありません。文法も単語も異なる別の言語です。そして,手話で育ってきた人たちは,手話を第一言語としています。何かを考えるときは頭の中で手のイメージが動いています。夢の中でも,会話のシーンでは手が動いています。

だから,手話を第一言語とする人たちに日本語の筆談で対応するのは,日本に住んでいる,聞こえる人たちに置き換えてみれば,英語の筆談を求めるようなものです。市役所の窓口に行って,「市民税の支払いの手続はどうすればいいですか?」と英語で書かされ,その答えが英語のメモで返ってくるのです。結構ハードル高くないですか?

日本で暮らすろうの人たちは,日本語の読み書きができないと生活に困るから,いつも使ってはいます。だから聞こえる人たちの英語に比べれば,ろうの人たちの日本語は達者です。そうは言っても,やはり第二言語だから,少し込み入った話になるとわからなくなってしまう人が多いのです。

だから,過去に筆談の刑事事件記録を見たことがあるけれど・・・筆談が少しできるからといって,手話が第一言語の人に,手話通訳をつけないで筆談で取調べをやるとか,公判を開くとか論外なのです。このあたりは法曹関係者も全く理解ができてないところです。

手話,筆談,その他もろもろ。どれで通じるかはその人によって異なる。

生まれたときから聞こえなくて,手話で育ってきた人は,手話が第一言語です。手話通訳が必須でしょう。
後天的に聞こえなくなる人もいます。例えば私が,今,病気で聞こえなくなったら,手話通訳の人が来てくれても何にもわかりません。筆談ならできますけど。

難聴の人もいます。磁気ループという機器を使えば聞き取れる人もいます。要約筆記で,文字で示してくれればわかる人もいます。

一言で聴覚障害者といっても,背景はいろいろです。その人に通じる手段が何なのかを確認して,最も適切なものを用意する必要があります。

手話は日本の公用語だ!

手話が大事なのはわかるけど,他の言語でも,なかなか通訳が見つからないこともあるし,筆談でも仕方ないんじゃないの?という声があるかもしれません。

では,障害者基本法第3条を見てみましょう。
(地域社会における共生等)
第三条 第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
三 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

「言語(手話を含む)」とありますね。

障害者基本法では,意思疎通のための手段として,手話が必要な人には,手話での意思疎通手段が選択できる機会を確保しろと定められています。基本法で定められたのだから,もはや手話は日本の公用語です。実際に,日本で暮らす人たちのうちで,少なくない人たちの第一言語が手話なのですから。

聾唖(ろうあ)者という呼び方でいいの?

聾は聞こえないこと,唖はしゃべれないことをさします。だから,聴覚障害がある人たちは,聞こえないからろう者だけど,手話でしゃべるのだから唖者ではないのです。

 

聴覚障害のある人の刑事事件を久しぶりに担当しています。いい機会なので,聴覚障害について,高松市手話通訳派遣拒否違憲訴訟の弁護団をやってたころに学んだことを,少し紹介してみました。あれから何年もたちました。また新しい議論がおきてるかもしれないですね。いつか勉強しなくては。

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